たくさんの自然や文化にあふれる南米・ペルー。南米で3番目に大きく、数々の世界遺産や古代文明のなごりを感じさせる地として知られています。
ペルーと聞くと真っ先にイメージするのはマチュピチュでしょう。一生に一度は行ってみたい世界遺産の地として日本人にも人気ですが、他にこれと言った特徴が思い浮かばないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、ペルーの文化や歴史に触れながら、日本からペルーへのアクセス方法やおすすめの観光スポットについて紹介していきます。
ペルーの概要
ペルーは南米用の太平洋側に位置する国で、正式名称はペルー共和国と言います。日本の約3.4倍の国土はエクアドルやコロンビアブラジル、ボリビア、チリと接しており、公用語はスペイン語ですが、山岳地帯の民族はインカ時代からの「ケチュア語」、チチカカ湖周辺はアイマラ語が使われています。
南半球にあるため季節は日本と逆で、雨季と乾季に分かれています。とは言え、首都リマはほとんど雨が降らない乾燥した砂漠地帯です。年間を通して過ごしやすいですが、標高の高い山岳地域は日中と夜の気温差が激しく、朝晩は冷え込みます。
ペルーの挨拶
ペルーでは、親しい人同士の挨拶はスペイン語で「Hola!(オラ)」ですが、特徴的なのが親愛の表現です。
男性同士の場合は、握手を交わしたりハイタッチしたりするのが一般的ですが、女性同士や男性と女性とで交わされる挨拶は、お互いの頬と頬を軽くつけて挨拶します。
非常に仲の良い間柄の場合はハグをしながら行うので、ほとんど頬にキスをしているように近い状態です。
初対面の人に対してもこのような方法で挨拶をするのが普通なので、はじめてペルーへ行った日本人が体験すると少し恥ずかしいと感じるかもしれません。
ただ、風習に慣れないから、恥ずかしいからと言って、握手やお辞儀だけで挨拶を済ませようとすると、相手に「自分は嫌われている」と思わせてしまいます。
初対面でも、相手が女性や異性の場合は親愛の意味を込めて頬を寄せるようにしましょう。
ペルーの食文化
ペルーは、首都リマのある太平洋沿いの海岸地帯、アンデス山脈が連なる山岳地域、アマゾンのジャングル地帯と、大きく分けて3つのエリアに分かれています。
その土地の特徴を活かした食文化がそれぞれに根付いており、食される料理もバラエティ豊かです。
海岸地域では、日本人と同じように主食は米で、海鮮料理が好まれます。代表的な料理は、タコやエビ、貝などを玉ねぎやトウガラシとともにマリネした「セビーチェ」です。
ペルーの国民食とも言える存在で、6月28日は「セビーチェの日」が制定されており、漁港のある地域では豊漁を願うセビーチェ祭りが開かれます。
一方、アンデス地方では、山で採れるじゃがいもやトウモロコシ料理が主食です。肉とじゃがいもやハーブなどを焼き石で蒸して焼く「パチャマンカ」が伝統的で、今ではペルー全土で愛されています。
また、アマゾンのジャングル地帯では、じゃがいもの代わりに調理用のバナナを使った料理や「ユカイモ」という芋の一種やナマズやピラルクなどの水魚が食されています。
世界で注目される「スーパーフード」
美容や健康、ダイエットのために食生活の見直しをする人が増えてきた今、オーガニック食やヴィーガン食がブームになり、ペルー原産の植物や作物が注目されています。
中でも代表的なのが、ポリフェノールを多く含む「キヌア」という穀物です。栄養価の高いスーパーフードとして取り沙汰されるようになってからは、多くが外国へ輸出されるようになりました。昔はペルーの人々が日常的に食べていましたが、価格が高騰した今、一般的には食されなくなってきています。
他にも、根菜の一種「マカ」や穀物「アマランサス」、「カムカム」などの果物も栄養価の高さが世界的に注目されています。
ニッケイペルー料理
明治時代、世界では砂糖が貴重な調味料とされていて、サトウキビの栽培や製造に大きな需要がありました。そのため、国を挙げて移民事業をしていて、当時たくさんの日本人がペルーへ移住した歴史があります。貧しかった日本では、ペルーで出稼ぎをして大金を稼ぐことが夢だったのです。
そこで生まれたのがニッケイペルー料理です。移民した日系人たちは、食文化の違いに苦しみながらも、ペルーで手に入れた食材を使用して和食を作り、ペルー人たちに提案していきました。
タコの薄造りにオリーブソースをかけた「プルポアラオリーボ」や刺身に唐辛子ソースをかけた「ティラディード」などが現地ペルー人に受け入れられたのをきっかけに、ニッケイペルー料理は日常的に食されるようになりました。
その後も移民経験を持つ日系人からラーメンやかつ丼などの日本食が持ち込まれ、今でも広く大衆に親しまれています。
ペルーの歴史
ペルーはかつてアンデス山脈を中心に、いくつもの文明が発展していました。かの有名なナスカの地上絵やパルパの地上絵は、紀元前200年から紀元後800年のナスカ時代の間に描かれたと言われています。
その文明を統一したのがインカ帝国です。1250年、クスコ地方のケチュア族がアンデス一帯の地方文化を統一し、首都クスコを中心に短期間で領土を拡大していました。
しかし、1532年、新大陸を目指して上陸した冒険家、スペインのピサロによって皇帝が捕らえられ、処刑されてからインカ文明はその長い幕を閉じます。
その後、19世紀はじめまでペルーはスペインの植民地下にあり、1821年に独立派がスペイン王党派をやぶるまで続きました。
ペルーの公用語がスペイン語、国民の大多数がカトリック教徒なのも、かつてスペインの植民地下だったことが影響しています。
独立後~現在まででは、大統領を元首とする共和国体制となり、行政権は大統領が行使しています。1990年にはペルーで日系人初の大統領としてフジモリ氏が選ばれ、2000年まで政権を担ったことも有名です。
ペルーへのアクセス
日本からペルー行きの直行便はありません。成田空港からアメリカのロサンゼルスやダラス、アトランタ、ヒューストンなどの主要空港を経由して乗り継ぐか、メキシコやヨーロッパの都市を経由して首都リマへ向かうのが一般的です。
飛行時間はおよそ20時間。トランジットまでの時間もあわせると、丸1日はかかります。
マチュピチュなどの遺跡観光に行くのであれば、さらに移動が必要です。
首都リマから近郊の都市、クスコまで車で40分、クスコからさらに列車で3時間半ほど移動して麓の村へ向かいます。麓の村からマチュピチュまではバスで20分ほどです。
日本からマチュピチュへ行きたいと考えているなら、おおよそで見積もっても片道30時間以上はかかると考えておきましょう。
ペルーの都市・観光地
首都リマ
ペルーの海岸線の砂漠地帯にあるリマは、人口970万人を超える南米屈指の大都市です。新市街地と旧市街地に分かれており、新市街は近代的なビルが立ち並ぶ都会的な印象を感じさせる一方、旧市街は今でもスペイン統治時代のコロニアル様式の建築物が残っており、ヨーロッパの異国情緒の雰囲気が漂っています。
リマの旧市街にあるサン・フランシスコ教会・修道院をはじめ、リマ歴史地区全体がユネスコの世界文化遺産として登録されました。
また、北部にはアメリカ大陸最古の文明都市「カラル」が、南部には「パチャカマック遺跡群」なども点在しており、植民地以前の時代から栄えてきた歴史も感じられる都市です。
ワカチナ
砂漠の中にある天然のオアシスから生まれたリゾート地区です。首都リマから車で4時間ほど南に位置しています。
以前は上流階級の憩いの場として知られていましたが、宝石のようなオアシスの夜景が美しい有名になり、観光客の人気スポットとして多くの人が訪れるようになりました。アウトドアを楽しめる地域としても人気で、砂の上でボードを走らせるサンドボーディングやサンドバギーなど、砂丘ならではのアクティビティも盛んです。
さらに、近郊のイカという街では、有名な「ナスカの地上絵」を遊覧飛行で楽しめます。
クスコ
かつてはインカ帝国の首都だったクスコは、レンガ造りの建物が美しい街並みが印象的。世界遺産「マチュピチュ」への拠点にも滞在できることから、南米でもトップクラスの人気観光地として知られています。
マチュピチュまで行かなくとも、インカ時代の人々の高度な技術を市内で垣間見ることができ、歴史や文明を感じられる地域です。
クスコは山岳地帯にあるため、一日の気温差が激しいのが特徴。日中は日差しが強いですが、夏でも朝晩は0℃近くまで気温が下がることもあるため、滞在中は紫外線対策と防寒対策の両方が欠かせません。
マチュピチュ遺跡のほかにも7色に輝く「レインボーマウンテン」や透明度抜群の「ウマンタイ湖」など、大自然がつくり出した神秘的なスポットがたくさん。トレッキングや乗馬など、山岳地帯ならではの体験型アクティビティも盛んです。
人類の歴史と自然の雄大さを多いに感じられることでしょう。
チャチャポヤス
アマゾンの北東端に位置する、高地とジャングルをまたぐ地域です。山の谷間の村クルスパタには、誰がどうやって設置したのか謎に満ちた人型の石棺が、断崖絶壁に並んでいます。
また、「第2のマチュピチュ」と言われるケラップ要塞遺跡があり、多くの住居群や神殿が見つかっています。ケラップ遺跡はプレ・インカ文明のひとつと言われていますが、謎に包まれた部分が多くまだ詳しいことは分かっていません。
インカ帝国の支配下により消滅したと言われていますが、チャチャポヤス文化の政治や宗教の中心地だったのではないかと考えられています。
ティティカカ湖(チチカカ湖)
ペルーの南部に位置する海抜3827メートルに位置する世界最大の高標高湖で、天空の湖とも呼ばれています。珍しい葦で作られた人工の浮き島「ウロス島」によって成り立っており、「地球上最古の人々」とされるウル族が暮らしています。観光客が浮き島に降り立つこともできるため、近くを訪れる際はクルーズを楽しんでみてはいかがでしょうか。